本年度は、この科研研究の第1年目で、上記研究課題の理論面と実証面で次のような分析を進めた。 理論面では、資金法の損益計算方式を現金創出力に関わらせて説明するロジックの整理を押し進めた。具体的には、営業活動からのキャッシュフロー(CFO)に加減する発生主義調整項目(α)について、αは企業の現金創出力を考慮した分配可能利益計算であるとの論理を展開した。 実証面では、監査法人を変更した企業群に着目して、資金法に基づく再計算利益の有用性の検証を行った。αを利益操作を受けない非裁量部分(α_1)と利益操作を受ける裁量部分(α_2)に分けた上で、CFOをα_1からなる部分を再計算利益として合成して、取り出して、その数値の株価関連性を検証した。所定の成果を収めたので、経営分析学会第25回大会(2008年5月)で報告し、さらに、ドバイで開催されたアジア会計学会の第9回大会(2008年11月)で報告をした。その論文は査読を受けて、大会のCD-ROMに収録されている。また、SEC基準を採用している企業群にも適用して、再計算利益に情報内容があることを確認し、論文を、佐藤編著の著書(『財務情報の信頼性』)の第5部第1章に収録した。
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