本年度は、この科研研究の第2年目で、上記研究課題の理論面と制度面と実証面で次のような分析を進めた。 理論面では、資金法の損益計算方式とエンティティー理論の関連について整理した。具体的には、営業活動からのキャッシュフロー(CFO)に加減する資本コスト(γ)を、エンティティー理論にもとづいて計算することができるが、そのことの理論的整合性を検討した。 制度面では、IASB(国際会計基準審議会)の概念フレームワークの「討議資料」の中に現われたエンティティー理論について検討をおこない、2009年11月にイスタンブールで開催されたアジア会計学会第10回大会で報告した。その論文は査読を受けて、大会のCD-ROMに収録されている。また、それらの研究成果を時事通信社の『税務経理』の「フォーラム」欄において解説した。 実証面では、監査法人変更企業に着目して、資金法に基づく再計算利益の有用性の検証を行った研究を、さらに深化させて、経営分析学会第25回秋季大会(2009年10月)で報告し、それを『経済科学』第57巻第3号(2009年12月)に掲載した。 その後、再計算利益(裁量前利益)の有用性の検証を、日経225企業にまで対象を広げて行っている。また、「企業残余利益」に関するデータを取得して、EVAの計算に用いられた資本コストを用いた再計算利益の有用性の検討を進めている。
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