今年度は、年初の計画の中で主に次の研究を行った。 第1に、負債の公正価値評価の研究を行った。その1つは、債務者企業の信用リスクの変化を金融負債の評価に反映することの意味および是非を論ずることであった。信用リスクの認識と資産側ののれん価値(インタンジブルズを含む)の公正価値でのオン・オフや減損処理との関係を含めて、一応の成果を上げることができた。もう1つには、非金融負債の公正価値評価の意味と是非を論ずることであった。こちらも、資産除却債務の評価および引当金の期待値・DCF評価の意味を明らかにすると共に、その考え方が製品やサービスを提供する義務に適用される場合の現行実務の大きな変化について推定し、論文等で会計数値の硬度や信頼性を犠牲にしてまで必要な将来予測ではないことを指摘した。 第2に、フロー・ベースの会計システムとストック・ベースの会計システムの混合システムのあり方の研究にも取り組んだ。公正価値会計システムへの移行によって、投資者が会計利益に基づいて企業の株主価値を推定して投資を行うというシステムが、経営者が市場の平均的な期待と自らの期待とを用いて株主価値を推定して市場に提示し、投資者はその是非を判断して投資を行うというシステムに変化する。当該会計システムの根本的な変化の過程で、財務諸表の作成主体が負担する、(1)財務諸表の直接的作成コスト、(2)教育のコスト、(3)試行錯誤のコストを含む学習コスト、および(4)システムの変更に伴う契約の変更コスト等の様々なコストの推定分析を可能な範囲で行った。今後、より具体的な証拠を得ることができれば、研究成果として公表できる。
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