第1に、公正価値評価の適用領域の拡張に関して、その理論的な意味を明らかにするために、会計利益モデルから純資産簿価モデルへのパラダイム・シフトの有無を検討し、当該推論を裏付ける経験的な証拠を得た。また、このパラダイム転換を判断する上で、結節点となる問題として、負債の公正価値評価の研究を行い、問題点を指摘した。 第2に、公正価値評価と短期主義的な経営との関係を検討し、公正価値評価の増大によって純資産簿価のボラティリティが高まり、それを投資指標とする短期指向機関投資者の投資活動が活発化する結果、短期指向機関投資者にサプライズを与えることを回避するために経営者が短期主義的・機会主義的経営を行う虞があることを論証し、経験的な証拠も見いだした。
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