本年度は、次年度以降の実証的研究の基礎研究として、規範理論に基づく研究を行った。本研究の中心となるのは、ファイナンス・リース取引のうち解約不能条件を満たすが、フルペイアウト条件を満たさない、いわゆる解約不能のオペレーティング・リース取引である。この取引は国際会計基準、および日本基準においても規定が整備されていない分野であり、その取引の測定方法が議論されている最新のトピックである。また、この解約不能のオペレーティング・リース取引の代表的なものが残価設定販売型リース取引である。この取引は、自動車販売において頻繁に利用されている。 本年度の研究成果は以下の2つである。 1. 残価設定販売型リース取引において、借手の観点からその取引の経済的実質を忠実に写像する測定方法を提案している。具体的には、解約不能のオペレーティング・リース取引においては、単なる賃貸借取引として測定するのではなく、リース料の性質を融資の元本と利息の返済とみるのが妥当である。 2. 日本に国際会計基準が導入されると、収益の認識基準が変わり、企業に多大な影響を与えることが予想される。当然、取引が複数年度にまたがることが通常であるリース取引も大きな影響を受ける。今回は、国際会計基準で検討されている2つの収益認識モデル(測定モデルと顧客対価モデル)について検討し、両方とも会計理論上妥当でないとした。
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