有価証券報告書等の法定開示書類や企業のホームページ等にみられるいわゆる事業リスク情報の開示は、(1)事業リスクのみの開示と、(2)事業リスクとそれへの対応状況(リスク処理方法)の開示とに類別される。(1)は、さらに(1-1)事業リスクが存在することの開示と、(1-2)事業リスクの大きさ(リスクの影響強度又は発生可能性ないしはその両者、あるいはリスクの大きさに対する経営者の認識の程度)の開示とに類別される。 上記(1)と(2)の区別は、(1)開示される情報の意味や目的だけでなく、(2)誰に対する情報開示か、(3)情報開示のプロセスにおいて仲介者が存在するかどうか、ということと関連づけて考えられるべきものである。また、(4)開示される事業リスクの性質(たとえば、事業の存続に関わるリスクとそうでないリスクはそのもっとも代表的なもの)によっても、(1)だけでなく(2)にまで開示内容を拡張すべきかどうかが異なってくる。 開示される事業リスク情報の量は多ければ多いほどよいと単純に考えられがちである。しかし、上記(1)から(4)にみられるパラメータを設定することによって、開示されるべき事業リスクの内容と開示の方法が体系的に整理されるべきである。 開示されるリスクに対する保証については、「第三者意見」等にみられるように緩い保証(水準の低い保証)の形が模索されている。開示情報の信頼性を担保するためには、保証は無いよりもあった方がよいといった漠然とした目的ではなく、保証を付与することにどのような意味があるかについても、上記(1)と(2)の区別は重要な意味をもってくる。(1)の場合には当該リスクが存在するかどうかについての保証となり、このような保証の意味については疑念が残る。一方、上記(2)の場合には、開示情報の信頼性に対する保証ということの裏側に、事業リスクへの対処方法の適切性に対する保証という意味が付与される。
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