本研究では、コーポレートガバナンスは所有と経営が分離した企業において、ステークホルダーが自身の投資リターンを確保するメカニズムであると定義される。本研究は、金融のグローバリゼーションの進展、市場特性および企業属性が財務報告とコーポレートガバナンスのメカニズムに及ぼす影響を明らかにしている。現在の全融市場では、グローバリゼーションと金融技術、特にデリバティブ技術のイノベーションが著しい。こうした金融サービスを記録する会計技術の高度化もまた著しい。そのため、金融サービス業のみならず一般事業会社の財務諸表にも見積要素と裁量的要素が多く含まれるようになっている2000年代初頭のEnronやWorldComの破綻や米国サブプライムローン問題に端を発する2008年の世界金融危機で明らかになったように、一企業、一市場の破綻の影響は世界中の市場に伝播するため、システミックリスクの増大が会計規制の強化の要因になっている。さらに、グローバル市場の失敗の問題を解決するため、直接、国家が市場に介入し、規制によって、企業に組織内行動のモニタリングシステムやコントロールシステムを整備させ、情報非対称性が引き起こす問題を解消するという新しい局面を迎えていることが明らかになった。とりわけ、金融サービスはグローバル市場で展開されるので、その会計・監査規制は、もはや国内の法的システムだけでなく国際的な監督・規制の枠組みで議論せざるを得ないことが確認された。
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