本研究の目的は、医療機関におけるプロフィットデザインシミュレータとして、医療機関の利益をあらかじめ経営計画において検討するために、医療収益および費用の発生メカニズムを構造化して、経営政策変数の変動に伴う経営計画結果の感度分析を行うことのできるモデルを構築するものである。この経営シミュレータは、経営意思決定支援ツールとして利益を左右する(1)期待医療収益、(2)標準医療費用(オペレーションコスト)、(3)設備等予想投資額(イニシャルコスト)のそれぞれの発生メカニズムと各因果関係を構造化し統合化することでシミュレーションモデルとして構築されるものである。これは短期経営計画から中期経営計画の立案までをカバーして、かつ日常的な原価管理を実現とする可能性を有しているモデルであり、これからの医療機関の経営にとって多方面で有用な活用効果が期待できると考えられるものである。 初年度の2008年度には、まず「医師・看護師の人件費(直接労務費)の標準化」を行う予定であったが、まず看護師の人件費の標準化についての研究成果を上げることができた。すなわち、患者ごとに必要が看護業務量を看護行為ごとにクラスタリングして、個別の看護業務量を推定し、それに基づいて看護必要時間を推定するに至った。個別の看護必要量の推定にあたっては、回帰系の予測モデルを作成して実現を図っている。しかし、医師については治療行為のクラスタリングが未だ困難であり、2009年度に完成する予定である。
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