本研究の目的は、医療機関におけるプロフィットデザインシミュレータとして、医療機関の利益をあらかじめ経営計画において検討するために、医療収益および費用の発生メカニズムを構造化して、経営政策変数の変動に伴う経営計画結果の感度分析を行うことのできるモデルを構築するものである。この経営シミュレータは、経営意思決定支援ツールとして利益を左右する(1)期待医療収益、(2)標準医療費用(オペレーションコスト)のそれぞれの発生メカニズムと各因果関係を構造化し統合化することでシミュレーションモデルとして構築されることを目指してきた。 期待収益に関しては、2010年度は特に一般病棟と回復期リハビリテーション病棟との間の診療報酬制度の違いに着目して、患者の転棟基準に関するシミュレーションモデルを構築した。これは患者の入院・退院状況を記述するために、ポアソン到着を前提としてモデルに組み込み、期待医療収益を予測している。 一方、標準医療費用に関しては、これまでの研究を発展させて、看護に関する必要時間を診療科特性および患者の特性分類から、より精緻に推定するモデルを構築した。これまでのモデルでは、患者評価指標に基づいて、看護項目を選定してその必要時間を積算していたが、生活補助業務でも診療科特性が反映されるいった医療現場の声を基に、モデルの改善を行った。 この研究を推進するに当たっては、これまで通り、福島県いわき市のM病院と協力関係を維持して、医療現場を確保して行ってきており、医療現場のニーズに応えた研究成果となっている。
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