研究概要 |
経済学理論では、財の価格は当該財の需要と供給によって決まる。監査および非監査サービスも1つの財と考えられる。 平成22年3月決算から、財務諸表監査のほかに、内部統制監査や四半期報告書に対するレビュー制度の導入によって監査報酬の需要曲線が右上方向にシフトした。そして、金融商品取引法の開示規則の改正により、連結および個別ベースでの前期と当期の監査報酬額が開示されることになった。とはいえ、前期の監査報酬の開示は任意開示である。実態調査の結果、多くの企業では比較可能な前期の監査報酬は開示されていなかった。前年度の監査報酬のデータ・ベースと、本年度との比較も試みたが、前年度については個別、あるいは連結ベースでの監査報酬の開示がなされており、調査結果の公表は断念せざるを得なかった。 そこで、監査報酬の上昇の原因となった内部統制監査制度と金融商品取引法適用の2,670社の内部統制監査について実態分析した。その成果は会計の商業雑誌に掲載した。 なお、北大の蟹江章教授が類似の研究(課題番号2030400)を実施するという情報を得たため、ジョイントで研究することにした。 新制度に基づく監査報酬の分析については、さらに平成22年の研究課題である。新制度2年度目であるため、初年度目の特殊要因は排除できる。
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