科研費申請の理由は単純である。商品の価格は重要曲線を供給曲線の交点によって決まる、というミクロ経済学の知識である。監査という財は、無形の商品であり、このミクロ経済学の知識が適用できる。現在、この2つの曲線に如何なる変化が発生し、その変化は継続するのか。 さて、戦後始まった法定監査である公認会計士監査(旧証券取引法監査)は、わが国では2009年3月決算から新たな段階に入った。財務諸表監査加えて内部統制監査、四半期レビューが始まり、重要曲線は変化した。そして、2年がたち、実態調査から新しい監査実務は定着化したようである。 今年度のわが国監査市場の実態調査は、日本を代表する東京証券取引所(第1部、2部、マザーズ)上場会社の平成21年3月決算である。財務諸表監査、内部統制監査、四半期レビューの適用による監査報酬支払額の前年度との趨勢分析が中心であった。調査では監査人の交代、非監査業務も調査対象に含めた。 分析は、SEC上場会社を区別し(理由:巨額の監査報酬の支払)、(1)被監査会社別分析、(2)監査法人別分析を実施した。その結果、いくつかの発見事項が明らかになったが、今後、このような傾向は定着化したと見られる。とくに、今回の調査では、海外ネットワーク会計事務所(形態は種々あるが、提携海外会計事務所)への支払も含めることにした。発見事項は、雑誌『企業会計』に掲載してある(盛田良久『監査市場の実態分析』企業会計63巻No.5、2011年5月号81-86ページ)。業績の公表が遅れたのは、雑誌掲載の順番待ちのためであった。
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