今回の科研費補助金による研究の最大の成果は、2009年に出版できた単著『M&Aの会計システム』(中央経済社)が2010年度の会計理論学会賞に輝いたことであり、2010年11月の会計理論学会総会での表彰式で公表された授賞理由は次のとおりである。本書の問題意識は、各国の会計基準が国際会計基準に収斂しつつあるなかで、M&Aの会計基準をいかに構築するかに焦点を当て、基礎概念を明確に整理し包括的な考察を行っている。本書の最大の特徴は、企業結合会計と連結会計の体系化にある。具体的に、本書は、M&Aに係る会計制度の中核である「企業結合会計」と「連結会計」の理論的本質を明らかにしている点、さらにはSPE(特別目的事業体)やVIE(変動持分事業体)、JV(ジョイントベンチャー)などの最新の論点についても論考されていることが挙げられる。さらに、多くの関連文献を渉猟し、体系的考察を試みている。
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