今年度、国外では、中国の中央財経大学、中国公認会計士協会、国家会計学院、監査事務所など、韓国公認会計士協会などを訪問、調査した。国内では、日本公認会計士協会、企業なども訪問、調査した。代表者と分担者はそれぞれの役割分担によって当初の計画通り目的に達成した。 2001年4月の国際会計基準審議会の改革を契機に、会計・監査基準の国際的コンバージェンスの動向をめぐって、EUが戦略的、国際会計・監査基準を採用することによって、従来、アメリカだけが主導する基準作りの時代が終わり、世界の構図が変わった。日本は日米欧の三極構図と分析しているのに対して、中国は、まず米国、国際会計基準審議会(国際会計士連盟も含む)、欧州(EU)の三極と分けて、さらにその他の極として、経済及び会計システムがアメリカとEUに近い国(例えば、カナダ、オーストラリア、ギリシャ、日本など)、新興国(ロシア、エジプト、中国など)、経済発展の規模が小さい国、発展途上国(アフリカ諸国)と分析している。それによると、日米欧の三極構図作りは既にあり得ない。 今年度、各国の監査基準の国際的コンバージェンスの動向を検討してきた結果、明らかにしたことは、コンバージェンスは国際的な政治学であり、国際外交でもある。各国の基準制定機関は理念と原則を持って交渉する場合、その合意形成の共通理念が必要である。日本の場合、その民主主義的なプロセスに基づいて行われるが、広く意見を聞けば聞くほどまとまらなくて、あえて基準設定のコスト(時間)がかかり、結果的に意思決定が遅く、良いタイミングが逃れる可能性が高い。日本は世界における会計・監査基準作りに発言権を有したければ、監査基準の理論的研究だけではなく、理念と原則をもって、戦略的に他の国と別の極を構築し、国際政治と外交的手腕が必要と思われる。
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