本研究は、自己論の観点から社会学の歴史を位置づけ、社会学の歴史に一貫した筋道を求めることを課題としている。社会学史の構想は次のようである。1.問題の提起、2.近代社会と社会学の課題、3.コミュニティと多様化する社会、4.大衆社会論、5.私化する社会、6.個人化する社会7.集合行動に向かう流れ、8.心理学化する自己とポストモダンの自己、9.結論と展望。 初年度は、それぞれの課題を検討するための文献収集とその文献に基づいた具体的な内容の検討を課題とした。文献収集では、上記2の「近代社会と社会学の課題」におけるウェーバーらの文献の収集、3の「コミュニティと多様化する社会」におけるミードなどの文献収集、4の「大衆社会論」におけるヨーロッパでのファシズム研究に基づく大衆社会論、ミルズ、コーンハウザ一、リースマンらのアメリカでの戦後の大衆社会論の文献収集、5の「私化する社会」における、大衆社会論以降のアメリカ社会学における私化論やナルシシズム論に関する文献収集、6の「個人化する社会」におけるギデンズやペックの個人化論に関する文献収集、7の「集合行動に向かう流れ」における集合行動論の文献収集、そして、8の「心理学化する自己とポストモダンの自己」におけるバウマンやガーゲンらのポストモダン的な自己論の文献収集を実施し、初年度分の目標をほぼ達成した。2年次以降は、さらに追加的な文献収集を企画している。 また、上記の文献収集に平行してそれらの文献を検討し、はじめの社会学史の大枠の修正や、それぞれの章の内容の具体的な検討を行っている途上である。
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