研究課題
平成21年度は、これまでの理論モデルの再検討を行うとともに、国際的な比較調査を展開するためのインフォーマント調査及びプリテストを実施してきた。A2~D2の研究計画におけるその具体的成果は、以下のとおりである。A2: 先行研究および理論モデルの検討、経験的仮説の決定、調査結果に基づくモデルの改訂を行う。これまでの研究成果が、J.HaidtやE.Turiel、L.Nucci、J.Smetanaらの知見と符合していることが判明した。このことは、悪のグレースケール形成が、かなりの程度、普遍的な基礎をもつことを意味している。これによって、青年期における相対主義の揺らぎ(悪のグレースケール形成)を、社会道徳的モジュールの分化プロセスとして位置づける理論的・経験的モデルを確立することができた。B2: 縦断的調査データに基づいて、悪のグレースケールの発達的生成と時代的変容を明らかにする。日本の縦断的調査データを利用して、グレースケールの発達的生成と時代変容を明らかにした。グレースケールの時代変容は、個人的領域の規範に関する急激な発達的変化を媒介として生じていることがわかった。性に関する時代変化については、2本の論文を執筆した。また、喫煙規範に関する論文は現在査読中である。C2: 比較文化的調査研究によって、悪のグレースケール形成に関する文化的共通性と差異を明らかにする。既存の台湾調査のデータを利用して、社会道徳的モジュールと分化プロセスの共通性を明らかにした(アジア太平洋教育社会学会)。また、それぞれのモジュールの外延に関する差異も明らかにした。また、台湾やスウェーデンにおける学会発表を利用して、グレースケール形成に関するインフォーマント調査とプレテストを行った。D2: 悪のグレースケールの知見を、学校での道徳教育や矯正教育、裁判員制度などへの応用可能性を検討する。悪のインデックスの多元性や複合性を利用した道徳教育の可能性について、学会発表を行った。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)
現代性教育研究月報 28巻1号
ページ: 1-7
性の健康 18巻2号
ページ: 33-39
The 2009 Asia-Pacific Forum on Sociology of Education : Conference Proceedings (National University of Tainan)
ページ: 821-824