平成22年度は、理論モデルの再検討を行うとともに、ICPSRの社会調査データアーカイブを利用して国際比較研究を行った。 これらの研究成果は、次のA~Dの研究の柱に対応して、次のような形で整理できる。 A3:理論モデルの改訂 社会・道徳的な問題処理モジュールの複数性や重層性に関する知見が、進化心理学や認知科学、神経科学、霊長類学などと大部分共有できることがわかった。またfMRIやEye-Trackingなどによるマイクロレベルの知見と国際比較調査だデータなどによるマクロな知見を架橋することの重要性を認識した。さらに、多元的近代化や再帰的近代をめぐる議論に関しても、このアプローチが重要であることを明らかにした。 B3:縦断的調査データの再分析 青年期から老年期までの社会認識(政治的関心)の変化が、複数の異なったモジュールの発達的変化の複合であることを明らかにした。 C3:国際比較調査研究の展開 ICPSRのデータアーカイブを利用することで、40か国の比較研究を行った。青少年の政治的無関心は、多くの社会で共通する現象であり、合わせて加齢による秩序や調整的関心の増加が明らかになった。 D3:道徳教育への応用 青少年と高齢者の政治的関心がずれていること、それらが社会的状況(殺人率、ジニ係数)によっても大きく異なることを明らかにした。世代や性、社会的条件による認識の差を自覚しつつ、それを発展的に解消していく道徳教育の必要性を示した。
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