研究概要 |
昨年度に引き続き,会話分析の方法を用いて,ビデオデータの転写および分析を進めた.その成果は,以下のとおりである. 1.妊婦の定期健診における問題の提示の自己開始(2010年アメリカ社会学会年次大会):このテーマは,2010年に「Research on Language and Social Interaction」誌発表された論文を引き継いでいる.論文では,保健医療専門家が計測・検査などを開始しつつある地点が,妊婦の問題提示自己開始の体系的な位置であることを示したが,この報告では,保健医療専門家がしばしば行なう「ありふれた(問題に関ゆる)質問」,すなわち,むくみや食欲などに関する質問への返答に対して,妊婦自身が一定の操作を加えることで,その返答を拡張すること,そして,その返答の拡張が,妊婦の問題提示自己開始の体系的な機会となることを,示した. 2.超音波検査における対象指示(2010年Society for Social Studies of Science年次大会):この報告は,現在「Social Studies of Science」誌に採択が決まった論文の一部を拡張したものである.妊婦の定期健診において超音波診断装置を用いて胎児の個別部位を捉える試みが,胎児全体を捉える試みのなかにどう埋め込まれているかを,検討した. 3.超音波検査における保健医療専門家の視線(2011年アメリカ社会学会年次大会[採択済]):超音波検査において,保健医療専門家が,妊婦の顔を見ることはほとんどない(基本的に,超音波モニターもしくは妊婦の腹部を見る).しかし,それでも,特定の発話とともに,まれに妊婦の顔を見るときがある.その発話は,多くの場合,妊婦の振舞いへの何らかの反応として構成されることを,示した.
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