大阪生野区にある「コリアタウン」を映像によって記録し、過去の映像と比較し、エスニック・コミュニティの時間的変化を映像という視点から明らかにするのが本研究の目的である。 記録の方法は、防振ステディカムに装着したビデオカメラを使って地域社会の街頭景観をシームレスに連続撮影するという特殊な方法である。この方法をもちいた同じ地域の映像記録は、1990年にすでに一度撮影されている。過去(1990年)に撮影されたこの映像対象を、同じ手法で、同じ時期に撮影し、得られた映像データを90年の映像データと比較することによって、地域社会の表象の変化とその方向を明らかにし、その変化を過去17年間の日本社会における在日コリアン社会の歴史的な変容、さらに在日外国人を取り巻く変化の中に位置づけることを試みた。ただし、今回の研究では、撮影にはハイビジョンビデオカメラを使用し、記録媒体はDVDを使用した。 撮影は、08年10月、09年1月の2つの時期に行われた。また、撮影された映像と過去の映像を比較するため、地元住民や専門家による映像の読み取り調査を行った。地元商店街の店主1名、地元高等学校韓国語・文化教諭1名、地元出身の韓国籍女性研究者1名、民俗宗教が専門の日本人大学研究者1名による読み取り調査を行った。また韓国に出張し、ソウル大学日本研究所関係者に映像を視聴してもらいコメントを求めると同時に、淑明女子大学で2名の韓国人インフォーマント(文化人類学専攻、都市デザイン専攻)による読み取り調査を実施した。さらに、中間段階の研究成果の公開として、今回採用した映像による調査技法を『映像フィールドワークの発想・ビデオカメラで考えよう』(七つ森書館)として公表した。
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