大阪生野区にある「コリアタウン」を映像によって記録した。記録の方法は、防振ステディカム(スタビライザ)をつかって地域社会の街頭景観をシームレスに連続撮影する方法である。 同地域の同方法による映像記録は、1990年に実施されている。2008~2010年の間、同方法で経年的に同地域を撮影した映像を90年の映像と比較することによって、地域の表象の変化を明らかにし、それを日本社会における在日コリアン集住地域の歴史的変容の中に位置づけた。今回の撮影では、ハイビジョンビデオカメラを使用し、記録媒体はDVDを使用した。主な分析結果は、次のとおりである。 ・90年にくらべて、今回の映像では、コリア文化をしめす指標的な映像記号が全体として増加している。たとえば、商店街の入り口に百済門が設営され、案内板には道祖神などが配置されている。コリアタウンは視覚的なエスニック化の傾向を強めた。 ・コリア料理の食材などを販売する店の数は増加している。その店頭の商品陳列などを観察すると、90年の映像では、食材に商品名がつけられていない場合が多く、店名も日本式の屋号を持つものが多い。他方、今回の映像では、商品名が明示されている場合が多く、また、商品表示にハングルを使用したものやコリアンの店であることを明示した店舗が増加した。これは、コリアタウンが日本人観光客を顧客とした観光地化の傾向が強めたことを示している。 ・店舗の中には、韓国から輸入された食材や韓国ドラマに関連するキャラクター商品などを販売する店舗が加わった。他方、地元で製造された食材などを販売する店舗は微減の傾向にあった。この事実は、コリアタウンにおけるニューカマーの増加を反映し、現代の韓国文化に即時的に繋がっていることを示している。 ・非コリアン商店の数に大きな変化はなかった。しかし、コリア文化の視覚化が拡大したため、商店街のモノトーン化の印象が伺える。
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