まちづくり活動や対人社会サービスを行う市民組織(NPO・NGOや市民団体、以下NPO)について、その組織・活動特性と、地域・情報ネットワークとの関係を明らかにすることを目的に、新たな方法論的試みに取り組みつつ、理論と実証の双方からアプローチしてきた。最終年度となる本年度では、これまでの研究をまとめつつ、主に以下の研究を行った。 これまで実施してきたNPO・市民団体に関する国内の文献・資料収集と整理を継続し、後述する海外調査を実施するため国内外の新たな事例の収集を行った。また、昨年度に引き続き、これまでに実施した関連調査(定量・定性)の再分析・方法論の再検討を行った。これらは、NPOに関するネットワーク調査の方法論としてまとめ、その一部については書籍として刊行された。 本年度の主たる調査としては、海外(米国サンフランシスコ・ベイエリア)の調査を行った。具体的には、多文化地域を背景とする福祉系のNPOを対象に、インタビュー調査及び資料分析に基づく事例調査を行い、1)これらの団体が、必ずしも組織規模は大きくないながらも、ネットワークを構築することで効果的にケアサービスを実施している現状、2)そうした効果的なネットワークを構築する具体的実態、3)地域コミュニティが当該組織の構造に与える影響などを検討した。これらの調査結果については、今後分析の再検討や精査を行ったのち、論文もしくは書籍等の形で発表する予定である。 また関連する理論研究として、従来のNPO理論の再検討を行い、主として経済学に依拠してきた従来の理論に、社会学的概念用具(ネットワーク、社会変動、社会システムなど)を接合することにより、上記調査結果を位置づけることを可能にする理論枠組みの構築を行った。
|