平成20年度は台湾北部の高齢者施設調査及び行政担当者インタビューを実施し、日本国内では関連資料の収集を行った。以下、20年度の知見をおおまかにまとめる。 1. 2007年3月に行政院を通過した「長期介護10年計画」では、介護産業全体の育成も視野にいれた長期的介護サービス体制の充実を目指している。10年間で817億台湾元余を介護サービス体制支援に投入予定であり、民間資源の活用を活性化することによって、高齢者福祉の中軸に据えている在宅ケアとコミュニティケアを補強し、大局的には介護コミュニティネットワークの形成を目指していると考えられる。 2. 自治体の経済状態によってケアサービス内容の差異が目立つ傾向にあり、現状では子女(特に息子)のいない高齢者が施設入所高齢者の大半を占めているが、台湾では行政が主体となって運営する高齢者施設のほかにも宗教団体が運営主体となっている施設も少なくない。認知症高齢者の増加とともに、高齢者介護については、すでに外国人ヘルパーの存在なしには立ちいかない現状があり、東南アジア圏の外国人ヘルパーがかなりの戦力となっている。 3. 在宅を望む高齢者のために家庭で個別に外国人ヘルパーを雇用して在宅ケアを行っているケースも少なくない。台湾では福祉分野における外国人労働者の受入れが日本より早く、それに伴う社会的問題も発生しているが、外国人労働者の管轄部門が分かれているために、立場によって問題の扱い方も異なっている。ヘルパーの人材育成さらには雇用者側の意識改革も、高齢者福祉の現場においてはかなり焦眉の問題であることが浮き彫りとなっている.
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