1.台湾では子どものいる高齢者は在宅ケアが中心であり、高齢者施設への入所に対しては高齢者層の心理的抵抗が根強い。子世代による在宅介護が難しい場合は、個人で外国人ヘルパーを雇用し、ベビーシッターを兼ねさせている事例も少なくない。この点は中国大陸において経済格差を背景に、農村からの出稼ぎ者を家政婦兼在宅ヘルパーとして雇用しているのと同じ状況である。ただし高齢者施設全体の水準については、両地域の経済発展状況をぬきに単純比較することはできない。 2.台湾の高齢者施設も大陸と同様に経営状態の二極化が進んでおり、施設水準は入所高齢者の退職前の職業や収入が大きく反映されたものとなっている。行政が運営主体となっている施設では、施設の外部評価や合理化(人員削減)が進み、それが入所者へのしわ寄せとなって表れている。また政府方針の転換により、低所得者層の施設入所条件であった息子の有無が「子どもの有無」に変更され、それが既入所者にも適用されることとなったため、現場では混乱が起きている。 3.外国籍ヘルパーの雇用に関する問題(給与・待遇を含む)は深刻である。経済格差を背景とする大陸からの花嫁が単身高齢者のヘルパーとして役割期待されている側面もあり、外国籍ヘルパーに関しては仲介業者のありかたなど実際の介護面意外でも社会的に解決すべき課題が多い。行政担当者は台湾籍ヘルパーの人材育成が急務であると口をそろえるが、日本同様、専門的ヘルパーの育成・雇用が順調に進んでいるとは言い難い。また歴史的背景を抱えた台湾独自の単身高齢者問題も存在していることがわかった。
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