研究の全体構想はら東アジアにおける下層社会の変容をグローバル化と関連づけて理論的に解明することにあり、本研究の具体的な目的は、日本におけるホームレス問題と非正規外国人を中心とする外国人労働者を脱工業化や経済のグローバル化という共通の枠組みで検討し、理論的な知見を得ることにある。本年度は、グローバル化と下層問題との関連をどのように捉えるかについての先行研究の整理と、下層問題分析のための理論的な枠組みについての国内研究者との情報・意見交換を中心に研究活動を行った。また、日本における非正規滞在者の漸減傾向の背景を整理すると共に、研修生制度の見直しを核とする外国人労働者受入れ論議を整理・検討した。予定していた台湾、韓国での現地調査は研究協力予定者との日程調整が困難であった事情などにより、実施できなかった。その代わり、日本に研修目的で来日し、帰国したベトナム人に関する予備的な調査をベトナム・ホーチミン市行で行った。元研修生の帰国後の就業・生活状況は、研修生制度の効果を検討するために必要な調査であるが、蓄積が極めて不十分である。本国に帰国した元非正規滞在者や研修生の現状や意識にも着目しながら、日本における外国人労働者政策のあり方を検討・評価することが重要と思えるが、そのための予備的な作業を進めた。最後に、アメリカの金融危機に端を発する雇用情勢の悪化と外国人労働者およびホームレス問題の動向を追跡した。
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