研究の全体構想は、東アジアにおける都市下層社会の変容をグローバル化と関連づけて理論的に解明することにある。今年度は、関連研究の整理・検討を行うとともに、補足的なデータの収集に努めたほかに、下層問題の理論的な解明に関心を持つ研究者等との議論に力を入れた。ホームレス問題に関しては、国外では、昨年8月サンフランシスコで開催されたASAの総会でホームレス問題に関するセッションでパネラーとして報告したほかに、複数の国の研究者と意見交換した。国内では、主に名古屋地域を中心に、ホームレス問題の現状と課題を追究した。自立支援策等のホームレス対策の一定の効果もあり、路上で暮らす可視的なホームレスの人々の数は減少している。可視的なホームレスが減少する中で、ホームレス問題の変容と今日的な状況を明らかにする作業を行っている。東アジアにおける国際的な人の移動の問題に関しては、今年3月には、中国延辺州に行き、近年、韓国への海外出稼ぎブームで大きく変容している中国朝鮮族の現状を検分するとともに、東アジアの国際的な人の移動に関して識者らと研究交流を行った。
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