研究の全体構想は、東アジアにおける都市下層社会の変容をグローバル化と関連付けて理論的に解明することにある。最終年度に当たる平成22年度は、補足的なデータの収集に努めるとともに、下層社会変容の全体像を把握するとともに、その変容の特徴や問題に対する理論的な整理・解明に力点を置いた。ホームレス問題に関しては、過去およそ20年にわたる日本のホームレス問題の変容を追うとともに、その日本的な特徴と問題点についての整理を試みている。国際的な人の移動をめぐる問題では、日本と韓国の比較を軸にして、主に非正規滞在者問題の解明に取り組んでいる。過去20年にわたる非正規滞在者問題の変容がグローバル化とともに、受け入れ国の入国管理政策に強く規定されていることを明らかにしている。さらに、従来別々に論じられ傾向が強かったホームレス問題と外国人労働者の問題を、下層問題として統一的に捉え、いずれにおいても経済のグローバル化と新自由主義的な国家政策が、排除と選別のメカニズムの下で下層問題を生み出してきたことを整理している。これらの成果は、近く、成果報告としてまとめる予定である。
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