研究課題
三年計画の二年目である今年は、昨年に引き続き東アジアのメディアの状況(特にテレビと音楽)について基本的な情報を集約しつつ、アジアの研究者間の意見交換を行いながら、文献調査と聞き取りを中心に調査研究を行った。この二年間の調査研究で得られた知見はおおよそ次の5点にまとめられる。1)日本文化が東アジアを席巻した1990年代、韓流が広がった2000年代を経て、この20年の間にアジアの文化の/文化を通じた「地域化(regionalization)」が確実に進行している。2)各国間の文化交流・文化変容は、初期の熱狂的な時期を過ぎて、一定のおさまりを見せている。とりわけ、文化産業の中で各国にノウハウの受容や定着が見られ、国内市場のための国内生産に回帰している側面もある。3)中国市場の拡大と新中流階層の出現を受けて、中国(特に香港・台湾)や韓国では、中国市場に対する積極的な方策が取られている。また中国政府は急速に文化産業の保護・育成に取り組んでいる。4)韓国政府の日本文化規制は、民主党政権誕生を受けたこと、韓国の競争力が高まったこと、植民地時代の記憶が(幾分)和らぎつつあることから、韓国内では弱まるとの観測が広がっている。5)デジタル化、インターネットの発達により、産業構造が大きく変化する一方で、個人レベルの文化交流や文化変容、市場経済に属さない大衆文化の交流が活発化している。研究の進捗状況は、テクノロジーの発展による産業全体の変化が、当初に計画していたよりも早く進んでいるので、状況の把握に苦労して面もあるが、幸い中国・韓国における協力者や協力研究組織にもめぐまれ、順調に進んでいる。国際的なレベルでの研究発表を論文発表や学会でも行い、国内外でも一定の評価されており、最終年度に向けて大きな成果を上げつつある。
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Inter-Asia Cultural Studies, Routledge : London Vol.10 No.4
ページ: 474-488
http://www.geidai.ac.jp/staff/fm077j.html
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200901005617140373