今年度は、連携研究者と計4回の研究会を開催した。その中で、旧自治省のコミュニティ施策のうち、いままでその検証が行われていない「推進地区」と「活性化地区」について、また、これも検証が行われていない都道府県レベルのコミュニティ施策についても、既存の資料・データを網羅的に検討した。その結果、実査の対象としては、時間や金銭の有効配分という点も考慮して、宮城・愛知・広島の3県を重点的に取り上げることにした。その上で、まずは宮城県のコミュニティ施策の検証に着手し、当時の資料を収集したが、現在、同県では表立ってコミュニティ施策を行っていないこと、また、当時の担当者を発見できなかったこともあり、方針を一部変更して、同県で唯一の「モデル・コミュニティ地区」である旧中田町浅水地区で聴き取り調査を実施するという方法により、同県の施策の検証を試みた。その結果、これも本研究の目的の一つである、農村地域における地区指定が<地域自治>の促進に及ぼす効果の検証という点で、自らの先行研究の事例と照らして、その積極的な意義が確認された。これは、旧自治省コミュニティ施策が、都市部の、しかも「親交的コミュニティ」の促進という限定的な意味でのみ、その有効性が認められるという通説に修正を迫るという点で、重要な知見である。他方、県レベルのコミュニティ施策の検証という点では、明確な結論が出なかった。以上の点をふまえて、次年度以後は、「モデル・コミュニティ地区」、「推進地区」、「活性化地区」(計371地区)の<地域自治>の促進効果を検証するという目的で、すべての自治体を対象とする「アンケート調査」を実施する予定である。
|