今年度は、大きくは2種類の調査を行った。ひとつは、宮城県と広島県をフィールドとする、旧自治省コミュニティ地区の事例調査(ケース・スタディ)である。具体的には、宮城県については、昨年度すでに取り上げた旧中田町浅水地区のほかに、旧泉市鶴が丘地区(コミュニティ推進地区)と旧矢本町赤井地区(コミュニティ活性化地区)を取り上げた。広島県については、旧五日市町八幡地区(モデル・コミュニティ地区)、三次市三次地区(コミュニティ推進地区)、旧沼隈町横倉地区(コミュニティ活動活性化地区)を取り上げた。これらの調査を通じて、モデル・コミュニティ地区とそれ以外とでは、地域の取り組みに差があること、旧自治省の施策よりも(それに促された)各自治体の独自の施策が大きな影響を及ぼしていること、とりわけ首長のリーダーシップが発揮できたところで、その傾向が大きいことなどが明らかになった。もうひとつの調査は、計371の指定地区を対象とする「アンケート調査」である。調査を2段階に分けること、HPを活用すること、督促を繰り返すことなどの工夫により、約7割まで回収率を高めることができた。旧自治省は、施策の効果を検証する目的で、それぞれの「指定」直後に調査を行っていたものの、これらすべての指定地区を網羅する調査は、いままで行われたことがなかった。この事実だけでも、今回の「アンケート調査」の意義が認められる。今年度は、単純集計までしかできなったので、来年度以後、詳しい分析に取り掛かる。また、各ケース・スタディの掘り下げを図るとともに、<地域自治>の新しい形態としての地域自治区や「全戸加入型NPO」を対象とする事例調査についても、取り組む予定である。
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