平成21年度は、理論研究としては、ポスト構造主義の言語論の批判的相対化を意図し、吉本隆明の「言語の自己表出性」概念の再検討、また社会システム論の深化を目指し、社会システム概念の再整理を行った。これらの成果は、「情報社会論」講義ノートの再構成として実現した。他方、私鉄広電支部の労働組合の分裂と統一の経過についてのモノグラフ研究の書評を行い、現場労働と企業経営の関係について整理した。 調査研究としては、(1)昨年同様、静岡大学工学部・情報学部の卒業生を対象に生活史、職歴、職場でのキャリア形成、現在の生活についてのインタビュー調査を実施し、65票の回収票を得た。これらの分析・整理については未だ途上であるが、一昨年来の調査データの分析整理とともに現在着手中である。もう一つの成果として、修論指導との関わりにおいて、(2)現代社会の消費社会的進行と適合的と思われるドラッグストアの経営展開の特徴と、それを現場で支える店長・薬剤師・女性従業員らの仕事の実態について、アンケート調査により分析した。この結果は、「ドラッグストアの経営成長を支える女性従業員の職場生活-A薬局における事例研究」(キョウ迪修士論文)としてまとめられた。 本年度の研究を介して、本研究テーマについて、より大きな時代変化の認識とつなげ、また所属企業の市場展開の特徴と関わらせて、現場の仕事とキャリア形成について考察することの必要がより具体的に浮かび上がっている。
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