本研究は、近年注目を集めつつある「環境再生を通じた地域再生」という地域づくり理念を離島という地域的文脈において検証し、その実態と課題を明らかにすることを目的としている。調査対象地は豊島と直島であるが、まずは瀬戸内の離島が置かれている一般的な社会経済的現状を幅広く把握するため、女木島、男木島、広島、与島で地域の現状に関する簡単な現地調査を行った。このうち与島については、瀬戸大橋架橋に伴って人口流出と通行料金問題が深刻化していることに関心をもち、自治会の協力を得てそれに関する質問紙調査を行った。また、日本離島センターに赴き、離島統計年報を中心に瀬戸内の離島に関する社会経済的な統計データの収集に努めた。これらは豊島や直島の事業・政策展開を分析する際の背景としての意義をもつものである。 豊島と直島については各々3〜4回現地に赴き、環境関連事業(廃棄物処理事業、リサイクル事業、環境学習事業等)の現状や課題、交通、医療、教育、産業といった生活の基本要件の充足度についてヒアリング調査を行った。また、豊島事件やその後の地域・環境再生に向けた取り組みに関する新聞記事の収集作業を行った。これらは21年度に実施予定の質問紙調査の調査票を作成する際の予備知識となるものである。また、近年の地方分権改革が離島に及ぼしている影響をテーマとした論文を、2007年に豊島で実施した質問紙調査のデータを元に作成した。
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