日本と同様に少子化が進行している韓国で行われている産後ケア施設事業の現状とその課題を明らかにし、本邦において、出産し退院した後も母子が心ゆくまで安心して滞在し、育児支援を受けることができる産後ケア施設導入に向けての示唆を得る目的で韓国のテジョンとソウルにある産後ケア施設(4施設)を視察し、インタビュー調査を行った。対象者は4施設の施設長および施設利用者の褥婦である。倫理的配慮として、研究参加は自由であること、中断可能であり、研究以外に使用しないことを伝えた。 インタビュー結果:4施設共に2006年の「母子保健法、改正法律」を受けて入材と施設設備を整え届出を行った施設で、立地条件の良い雑居ビルの1フロア、もしくは2フロアで開設していた。施設で提供されているケアサービスは、褥婦の身体回復へのケアや家族計画、母乳哺育、育児に関する援助などであったが経営者の職種(助産師、看護師、医療職者以外)の違いによって差がみられた。また、産後ケア施設は業種としてサービス業に分類されているため運営やサービスの質を規定する法律がなく、施設内での産科医や小児科医の診療は医療法の違反となることや、特に新生児に感染が発症した場合の拡大の危険性等の課題を抱えていた。昨年世田谷に開設した本邦初の産後ケア施設もホテル業と見なされたことから、本邦における産後ケア施設導入については医療法に基づく施設とする課題や、褥婦や新生児に対するサービスの質の保証と安全性の担保についての検討の必要性が示唆された。
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