当研究に関連する先行研究では、映像データ、特にテレビ映像分析の手法にかかわる研究を展開し、分析対象となるテレビ映像資料を体系的に収集することを試みた。それらは、映像分析の手法について比較文化的に探求するという目的のためには必要十分な数量であったが、個人で収集可能な映像素材数には限界があり、ある程度の分類上の体系性こそ確保されたものの、膨大な映像資料を徹底的かつ網羅的に収集するには至らなかった。継続する当研究では、より体系的で網羅的な映像アーカイブ構築を目標として、それに必要な諸条件の検討、基礎的研究を継続的に行う。まず、期間と分野を限定して、映像資料の網羅的データ収集を試みる。 以上のような研究目的に沿って、初年度は次のような成果を上げた。 (1)映像アーカイブ構築に関する基礎的文献資料の収集 (2)各地域・各国の映像アーカイブについての資料収集と調査 日本国内・海外の各地域の映像資料、テレビ番組資料の収集状況を調査し、関連する研究者を招いて数次の研究会を実施した。 (3)映像アーカイブ構築に関する諸問題の検討 映像アーカイブ構築の具体的諸問題の検討、映像アーカイブ構築の技術的用件と、放送法・著作権法といった制度的用件である。「映像資料」をどのように収集・保存していくかという技術問題を検討した論文を発表した。制度的観点からは、映像資料アーカイブをどのように公開していくか、教育的利用・研究利用・映像製作における再利用・再加工、一般市民への研究成果の還元の各レベルにおける諸問題を検討を行い、関連するシンポジウムで報告を行った。 (4)継続的なデータ収集と分類作業 平成19年度までの研究助成金で得られた機材を用いて、試験的な資料収集を行った。データベースとしての汎用性の高さ、効率的な資料分類方法について検討を重ねた。
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