平成20年度計画では、平成19年度に実施した限界地域に暮らす高齢者への聞き取り調査から、地域で元気に暮らすための必要条件や要因の検討を行うために、周辺地域に在住する500名を対象に質問調査を実施し、元気に暮らすために必要な地域での健康福祉に関する人間関係要因を検討するとした。しかし、地域住民調査を先行して実施した(平成20年1月期)ため、20年度は市街地在住高齢者と限界地域在住高齢者への聞き取り調査から人的資源に関する要因分析を行うことに計画を修正した。 調査対象は、山口県Y市在住65歳以上高齢者61名、限界地域(山口県S市S地区)在住65歳以上高齢者59名である。調査項目は、フェイス項目他、在住年数、永住希望の有無と理由、生活全般への満足度、教育暦、同居家族構成、家族以外の近隣者との関わり人数や関わりの頻度、SOC(Sense of Coherence)調査、主観的健康観や生活満足度、プロダクティブ・アクティビティーについて調査検討を行った。 結果、限界地域のS地区では、自活と近隣者(集団)との関係構造を意識しなくてはならない状況がSOCを育て、決して多いはずのない近隣者との関わりの満足度を高めることに繋がっていることがわかった。また、SOC項目の処理可能感と有意味感は、Y市在住者よりもS地区在住者、さらにS地区在住者よりももっと集落戸数の少ない小規模高齢化集落(3〜5戸地域)の方が高かった。この事から、利便性の悪い住環境にあっても、「そこで暮らす」意義は大きく、他者へ依存することが前提ではなく、互いに支援しあう関係の中で、それぞれの世帯が自立・自活の生活を送っている実態を浮き彫りにできた。よって、人的資源に関する要因は、市街地と限界地域では異なり、同一の考え方において比較検討できなことがわかった。本報告は、松尾恵理卒業論文「限界集落に住む高齢者における健康生成の要因検討-sense of coherence scaleを用いた2地区の比較から-」においてまとめている。
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