21年度の調査により、漆器産業そのものと漆器産地の弱体化という状況のなかで、それぞれの産地における「産地社会」の変化もまちまちであることが明らかになった。 津軽では、産地における各職人のいわば独立と職人間のネットワーク作りが顕著である。それが、個性的な漆器の開発と言う形となって現れてもいる。一部ではあるが、似たような動きが、川連や会津にもみてとれる。とくに会津では、特定の事業所が産地をはるかに越えた事業展開を成功させているケースも出ている。 しかし、その会津や川連では、そうした職人の独立とネットワークはまだ限られた動きでしかない。輪島や村上(木彫椎朱)や飛騨(春慶塗)では、職人が独立した事業展開を行っているケースはほとんどなく、従来からのいわば産地体制がかなり強く続いている。それは、産地体制が強い分だけ職人の独立とネットワークを難しくしているとも言える。 また、金沢では、むしろ事業所(問屋)そのものが産地を越えた広域ネットワークを構成するなかで生き残りを図っているケースがみられ、「産地」そのものが産地外のネットワークを構成することで成り立っている面がある。 さらに、能代(春慶塗)では「産地」がほとんど消えかかっているところまで来ている。逆に、新潟では、いったん消えかかった産地を復活させることに成功し、小規模ではあるが、後継者育成も含めた職人層の育成が進みつつある。
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