2008年度の研究は大きく分けて3つの点にまとめることができる。1つは2006年度以降を中心とする開業医師の在宅医療実践とそこに生起する諸問題をとらえるために、文献資料を収集し、また重要な映像資料の閲覧をNHKアーカイブスセンターの協力を得ておこなった。2点目として、在宅医療を社会運動の視点からとらえ、2006年度の医療制度改革以前に行われていた医師や看護師等による独自の取り組みを歴史的に理解し記述することため、開業医師のライフヒストリーの聞き取りを進めた。3点目として、医療・看護・福祉関係者が集う全国レベルの大会に出席し、情報を集めるとともに交流をはかった。2008年度は関西および東京で開業する医師にインタビューを実施し、在宅医療および在宅ケアにかかわる全国規模の学会・研究会(北海道、千葉、京都、鹿児島、大阪)に参加した。また、在宅で看取った経験をもつ家族へのインタビューも協力を得て1名についておこなった。以上の調査は、研究協力者とともに2名でおこなった。インタビュー調査では、1990年代におこった<在宅ケアの全国ネットワーク化>の黎明期を支えた医師を対象に実施した。病院中心あるいは医師中心の医療からなぜ在宅医療に向かっていったのか、固有の生活史および医師としての経験が語られた。これらの医師はいずれも<在宅医療運動>の担い手・第一世代といってよい。全国大会等ではネットワークのIT化が次世代を特徴づけており、社会運動という視点で見ると世代間の連続性と共通性について、今後継続してみていく必要がある。
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