本年度についても、昨年と同様に大学の夏期休暇を利用して、4週間程度アメリカ合衆国に出張し、直接ローカル組合、労働者センター、および労働NGOのオーガナイザーおよび「リーダー」を対象にしてインタビューを行った。対象地域については、昨年までのサンフランシスコ地域に加えて、サンディエゴ地域においても労働組合のオーガナイザーとNGOのリーダーに対してインタビューを試みた。今年度については、とりわけ劣悪な労働条件によって特徴づけられるスウェット・ショップを改善しようとする運動とサンディエゴなどの国境地帯におけるトランスナショナルな連帯活動について、重点的な調査を試みた。主な知見は以下のとおりである。 (1) サンフランシスコのチャイナタウンで活動する労働者センターは、当該地区のレストラン労働者を組織化するとともに、その労働実態について大規模な調査活動を行い、その結果を公表することによって、移民労働者の待遇改善を広く訴える運動を行っている。この調査活動の特徴としては、カリフォルニア大学の研究者や労働組合の活動家が参加するネットワーク型の活動であること、労働者自身を調査員とすることによって、彼(彼女)らが運動主体として覚醒することが追求されていることなどがあげられる。 (2) サンディエゴ地区においては、国境を越えて合衆国に入国する不法移民を保護する活動を行っている労働NGOやメキシコの国境工業地帯(マキラドーラ)の労働条件を調査し市民に公表する運動の存在が確認できた。これらは、運動の規模は小さいものの、保守的とされる当該地域にあっては注目に値する活動である。
|