生活の質の向上とも関連して希少資源たる時間の価値が浮上している現代日本で、個人と家族の生活の基本的分析要素であった「貨幣と消費」に対比して「時間とその配分」を重要な変数と考え、それをめぐるライフスタイルの実態や諸属性ごとの差異、社会心理の解明を目的として研究を進めた。 3年間の研究のうち、平成21年度は、(1) 基礎理論研究としての「時間の社会学」「生活の質」の文献研究、(2) 家計経済研究所の家計・消費行動に関する2次データの分析、(3) 「生活時間と生活の質の関連に関する調査研究」の調査票調査のをおこなった。(1) については、前年度にひきつづき研究をつづけ、(2)(3)の研究につなげる関連概念の検討などをおこなった。 (2) については、家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」の2005年データを借り受け、2次分析を行った。データの対象者は女性であるが、そこでの観点は、(1) 諸属性ごとの生活時間配分の差異(未婚・既婚、無職・有職など)、(2) 仕事時間、家事時間、自由時間と諸変数との関係について考察を行った。24時間という限られた中での配分であるがゆえ、諸属性ごとに仕事時間の増加が自由時間の減少につながる、他方で家事時間を減少させられる層とそうでない層など、時間配分ごとの相互連関が確認されるものいくつかあった。 (3) については、回収の有効性に鑑み、調査会社の保有する全国パネル対象を利用することとし、2009年10月から11月にかけて「生活時間と生活の質の関連に関する調査研究」を実施した。調査の大項目としては、家族構成など属性要因、生活時間の全体配分、仕事内容や労働時問、家事内容や家事時間、余暇行動や自由時間、消費行動、生活意識・社会意識などを尋ねることとした。調査票は1200票配票し、660票(回収率55.0%)の回答を得た。21年度は次年度の分析が可能となるよう、データセットの作成までを課題とし、完了した。
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