研究課題
本研究は、2008年8月に行われた北京オリンピック報道によって視聴者の対中国意識がどのように変化したか探るため、以下の5つの調査方法を組み合わせて多角的に明らかにしようと試みた。それは、テレビニュース内容分析、オリンピックの前後に実施したインターネットによるアンケート調査、フォーカスグループ・インタビュー、中国中央電視台および日本の報道関係者へのインタビュー調査である。調査の結果、テレビニュース視聴者の中国(人)についての認識は、オリンピック前後で部分的に変化があったことが明らかとなった。中国(人)イメージが変化した人は直接的な経験(渡航経験や友人・知人)が無い、オリンピック前に中国に対しネガティブな印象を持っていた人がオリンピックを契機に良い印象を持ったようである。このような傾向を持つ人は若い世代が多く、今後テレビの報道内容によって、若者は中国(人)イメージが変化する余地が示唆された。中国(人)の印象が変化しにくい人は、メディア接触によって先有傾向の強化・補強が行われていることが推察された。取り上げられた出来事がインタビュー対象者自身の中国経験やイメージと結びつけられていたからである。テレビニュースは中国を発生地とする報道が全体の38.1%を占め、中国報道の議題設定や放送局別の傾向が明らかになった。視聴者はオリンピックの競技ニュースというよりは、オリンピック開催前、期間中の関連報道から中国(人)に関する情報を得ていたようである。またテレビをよく視聴した人は、新聞、インターネットなどに多く接した人よりも肯定的イメージへの変化がみられた.今後の課題は3つある。第一に、テレビニュース以外の中国関連報道の一般的傾向を探ること、第二に国際放送とスポーツイベントの報道のあり方を考察すること。そして、報道内容とオーディエンスへの影響がどのような関係があるかについて総合的考察を行うことである。
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The International Journal of the History of Sport
巻: Vol.27, June-July ページ: 1781-1796