本研究の目的は、日本人の基底意識としてある「宗教的な心」あるいは「素朴な宗教的感情」とも言えるものについて、日常の価値観との関連の中で、洞察を深めていくことである。この一つの実証として、2008年度は横浜市の一部地域住民を対象に郵送調査を計画した。調査票は、統計数理研究所の国民性調査や環太平洋価値観比較調査等の分析を踏まえ、調査内容を充実させ、多面的・多次元の分析を念頭に再検討した。 調査対象の抽出台帳として選挙人名簿を計画したが、横浜市への選挙人名簿閲申請が選挙に関する調査内容でないとして許可されず、住民台帳に切り替えたため、住民台帳閲覧の1冊1500円の費用がかかることとなった。12月から1月にかけて旭区、神奈川区、保土ヶ谷区の対象者を抽出し、2009年2月に郵送調査を実施した。また3月に入って鶴見区を追加した。有効回収率は旭区35%、神奈川区34%、保土ヶ谷区38%、郵送調査としては一般的なものであった(鶴見区は郵送作業手違いがあり24%)。 前3区の回答者の特徴は、年齢は20歳代が少なく70歳以上が多めであり、学歴は高学歴に偏る(大学卒39%)などのことが挙げられる。また、人間関係の信頼感が高めであることは同種の郵送調査と同様の特徴である。調査の結果は、調査法や回収率の特徴に注意しながら分析し論じていかなければならないが、信仰を持つ者が2割であるのに対し、7割が宗教的な心は大切と考え、8割が神社やお寺で改まった気持ちになるなど。健康観、死生観、不安感、信頼感、満足感、科学文明観など生活の価値観の中に日本の宗教的な心の意味について、多方面から分析を進める。
|