本年度は、カリフォルニア大学バークレー校にて、シリコンバレーのIT産業の現状を分析するとともに、社会学の調査研究を再考するために同校マイケル・ブラウォイ教授と「パブリック・ソシオロジー」に関して意見交換を行った。またシリコンバレーとアジア諸国のサイエンスパークを比較するために中国北京市および上海市のサイエンスパークとIT企業の調査を実施した。 改革開放以前の中国においては、先進資本主義諸国に比べてITコンピュータ技術革新が大きく遅れた。この状態から急速に現在の技術水準に追いつくためには、国家主導によるITコンピュータ技術の育成が必要とされ、技術開発の中核は中国科学院、北京大学、清華大学など国立の研究機関によって担われることになった。今回このような背景を踏まえて、大学発ITヴェンチャー企業の調査を行った。新思軟件科技有限公司(北京市)は日本の進んだ3G技術を導入し、中国市場で販売とサービスを行うために、淅江大学グループの大学発ヴェンチャー企業として1998年に設立された。亜和維教育技術有限公司は企業から委託されて、入社前のコンピュータ技術の社員教育を行う企業で、北京連合大学の大学発ヴェンチャー企業として2005年に設立された。上海市では復旦大学が日本と中国のIT産業におけるオフショア・ビジネスの展開を予想して1991年に設立した上海中和軟件有限公司を調査した。中和軟件は日本国際協力機構(JAIDO)との合弁企業として開設され、後に復旦大学グループの独資に移行し、現在は野村総合研究所をはじめ小松製作所、富士通など多くの日本企業のオフショア・ビジネスを担う企業として活躍している。 このほか、オフショア・ビジネスの展開を分析するために、長野県に本社を置くIT企業キッセイ・コムテック社が2003年に設立した普拉内特計算機技術有限公司(北京および上海市に事業所)を調査した。
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