本研究はAugmented Reality技術と携帯電話のコラボレーションが社会に与える影響について研究するものである。本年度は3年間の研究期間の2年目に当たる。初年度から本研究で注目しているAR技術を利用したアプリケーション「Sekai Camera」はiPhone3GSの最新無料アプリとして2009年9月にサービスが開始された。KDDIもAR技術を利用した「実空間透視ケータイ」を開発中であり、モバイルAR技術はこの一年間で実用化に向けて大きく前進した。このような状況を調べつつ、新しいソフトやヘッドマウントディスプレイなどを購入し、リアルとバーチャルの融合を作り出す世界が人々のリアル感覚に与える影響について研究してきた。6月には情報通信学会第26回大会(於:桜美林大学)で研究成果の一部を報告した。同時にモバイルARをテーマに研究会や学会のフォーラム(情報通信学会)をコーディネートし議論を深めた。年末から各社がモバイルARの実験を全国で一斉に開始したため幾つかの実験(大阪・京都)に参加した。海外でもAdriana de Souza e Silva編の"Digital Cityscapes"が刊行され、モバイルARに関する社会学的研究が今後世界に拡大することが予想される。このようにモバイルARが実用化に向けて動いているその全体像が明らかになったが、本研究を開始した当初に想定していた以上の速さで技術開発や情勢の変化が起こっている。次年度はこのような変化に対応しながらさらに研究を進め、研究成果のまとめを行いたい。
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