研究概要 |
4年間の研究の第一年目として,本年度は,まず,本研究の視角及び理論的方法論的な枠組に関する文献研究を行った。具体的には,不安定就労問題に関する社会問題の構成過程を構築主義的アプローチによって整理するとともに、戦後から高度経済成長を経てオイルショックに至るまで、釜ヶ崎・山谷・寿町などの寄せ場に対してなされた行政施策と、1980年後半からの不安定就労問題に対する行政施策の相違を比較検討した。この研究成果の一部を日本解放社会学会大会で報告した。次に,現代の不安定就労問題の実態を明らかにするために,東京,京都,大阪,広島,札幌において,本調査のための予備的なインタビュー調査と資料収集を行った。特に重点を置いたのは,不安定就労問題に関わる支援団体や社会運動組織に関する調査・資料収集である。これらの予備調査のデータ及び資料を整理・分析し,次年度以降の本調査に向けた方法論的枠組みを検討した。これらの調査・データ整理・分析を通じて明らかになったのは,従来の寄せ場や不安定就労問題研究の理論的・方法論的枠組みが製造業・建設業の男性労働者を中心に成立してきたということであり,現代的な実態へと迫るためには,サービス業や女性を射程にいれた新しい理論的・方法論的枠組みの必要性である。また,寄せ場的労働市場の拡散は,人材派遣業法の改正によって製造業種を巻き込む形で促進されたが,既にその実態は法的な枠組みを超えて港湾・運輸・サービス業へと拡大しており,今後法改正による規制が強化されても,問題を容易に解決へと至らせるのは困難な諸問題=実態が存在していることも明らかになった。これらの実態を整理し,次年度以降の本調査に備えたい。
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