これまでの福祉研究は、概して普遍的ないし一般的な「福祉」概念が基礎に置かれ、あらゆる場所を貫通して一義的な「福祉」概念が妥当するものと考えられる傾向があった。しかしながら、たとえば郊外のニュータウンと、伝統的な人間関係が濃密に残る下町(旧市街地)とでは、自ずとそこで求められる「福祉」(たとえば高齢者介護サービスのあり方、コミュニティ形成のための方策)も異なってくるのはないか。したがって、福祉の分野に「地理」あるいは空間(ないし夢所、土地)の視点を導入し、新たな統合を図っていくことが、これからの福祉を考え政策展開を行っていく場合に重要となる。 以上のような問題意識を踏まえ、平成20年度においては、(1)「福祉地理学」という新たなコンセプトに関する吟味を行い、福祉政策と都市政策、土地政策等の融合に向けた基本的な枠組みを整理するとともに、(2)「福祉と環境の統合」を通じた「持続可能な福祉コミュニティ」という新たなコンセプトとその内容の定式化・深化に向けた概念整理等を実施し、また若干のデータ整理を行った。
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