本調査研究は、これまでの「福祉」概念が概して普遍的かつ「場所」を超越したものとして想定される傾向が強かったのに対し、たとえば郊外のニュータウンと、伝統的な人間関係が濃密に残る下町(旧市街地)とでは、自ずとそこで求められる「福祉」(たとえば高齢者介護サービスのあり方、コミュニティ形成のための方策)も異なる面を有するのではないかという問題意識に立ち、福祉の分野に「地理」あるいは空間(ないし場所、土地)の視点を導入するとともに、「持続可能な福祉コミュニティ」とも呼ぶべきモデルを構想していくことを内容としている。平成21年度においては、特に都市政策と福祉政策の統合という問題意識を踏まえた研究成果の一部を広井良典『コミュニティを問いなおす』(筑摩書房)として公刊するとともに、特に地域経済や地域再生との関連を視野に入れ、検討している自治体アンケート調査の基礎となる概念的な枠組みの整理を行った。
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