研究概要 |
子ども虐待のない地域づくりには,「相談の社会化」を進め,ニーズキャッチ不全をきたさない福祉コミュニテイづくりが大きな役割を果たす。 このことから平成20年度は,(1)虐待当事者,(2)地域住民,高校,大学生,里親会会員,行政職員,(3)要保護児童対策地域協議会構成員を対象に,主に相談行動の心理社会的機制についてミクロ,メゾ・エクソの各レベルから検討を進めた。この結果,重篤な子ども虐待を惹起した事例からは「私が困ったときに周りは助けてくれなかった。公私にわたるこれまでの相談は役にたたなかった」負の体験から社会とのインターフェース機能に失調をきたしパワレスな状態に陥り,相談援助サービスへのアクセス不全を招いていることが明らかになった。 子ども虐待の防止と解決は一機関単独では困難であり,相談支援過程で地域との協働は欠かせない。このことから平成21年度は,「要保護児童対策地域協議会(以下要対協という)を核にした子ども虐待のない地域づくり」を福祉コミュニティの形成,ソーシャルキャピタルの蓄積過程としてとらえ,要対協が設置されたあと地域における子ども家庭福祉をめぐる状況がどのように変化してきたかを,児童相談所の視点から分析した。 都道府県及び政令市の(中央)児童相談所67か所を対象に,郵送及び現地聞き取りの方法により実施した。22年度引き続いて現地聞き取り調査を行い,最終まとめを行うが,多くの児童相談所が要対協設置後市町村は,児童相談所と市町村の役割分担・連携に苦慮しながらも,子ども虐待相談に主体的に取り組み始め,要対協の設置は子ども虐待のない福祉のまちづくりの機運醸成につながると考えていた。
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