研究課題/領域番号 |
20530505
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石黒 暢 大阪大学, 世界言語研究センター, 准教授 (20273740)
|
研究分担者 |
斉藤 弥生 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (40263347)
吉岡 洋子 頌栄短期大学, 准教授 (80462018)
|
キーワード | 社会福祉 / 介護 / 北欧 / ホームヘルプ / 民間委託 / デンマーク / デンマーク:スウェーデン:ノルウェー:フィンランド |
研究概要 |
本研究における平成22年度の研究実績は以下の通りである。まず、約2か月に1回のペースで大阪大学にて定例研究会を行った。本研究の成果を総括するために、メンバーの研究報告を行い、議論を重ねた。海外調査としては、斉藤(研究分担者)がフィンランド、ロシアにおいて高齢者介護に関するヒアリング調査を実施し、情報収集を行った。研究成果の一部は、石黒(研究代表者)が論文1件、斉藤が著書1冊(共著)と論文1件、吉岡(研究分担者)が著書2冊(共著)にまとめ、公表した。 本研究で明らかになったことは主に次の通りである。デンマークにおいてもスウェーデンにおいても、介護における「選択の自由」を保障するために、ホームヘルプサービス利用者が事業者を選択できるシステムが導入され、拡大しつつある。複数の事業所がサービス供給主体になることで、競争原理が働き、サービスの質が向上すると期待されているが、実際に選択できるかどうか、つまり民間事業所の参入があるかどうかは、自治体によって異なっている。特に都市部には民間事業所の参入が多く見られるが、地方では参入がない自治体もあり、歪みが生じている。また、人間同士の個人的な関係を伴うケアにおいて、商品と同様な競争原理が働くかどうかについても検討の余地が残されている。さらに、個人が自らの利益を最大にするために選択するというシステムが、福祉国家の連帯感を損ない、福祉施策を後退させる可能性も指摘されている。 年度末に石黒(研究代表者)は、アイスランドにおいて開催された北欧の介護労働に関する学会に出席した。そこでは、本研究の成果を、インフォーマルな形ではあるが、北欧の介護研究者に報告し、意見交換することができた。今後の研究の展開につながる研究協力体制の基礎をも築くことができたと考える。
|