研究概要 |
2006年10月より完全施行された障害者自立支援法にもとづき,とりわけ精神障害者に対する福祉サービスは大きな岐路をむかえている。精神障害者がどのように各種の支援サービスを意味づけ,どのような意義を感じてそうしたサービスを利用しているのか,そうしたサービスを利用しながら自分の生活をどのように捉えているかという「主観的生活意識」の理解が,施策やサービスを通して何を提供すべきであるかを考える上で重要であると考える。同様に,支援にあたる援助者にとっても,精神障害者の地域生活を支える上で何を重要と考え,それをどのように実践に生かそうとしているかを考え続けることが重要となる。本研究では,1990年代半ばより急激な脱施設化を達成したスウェーデンと日本の両国における比較を通して,精神障害者の主観的生活意識の理解と,援助者がそれをどのように理解するのかを検討するものである。 本年度においては,1)精神障害保健福祉施策に関する内外文献を収集し,両国における施策・サービス体系の経緯と現状を整理した。成果は現在執筆中である。2)11月にスウェーデンのヴァルムランド県およびイエテボリ市において,13名のパーソナル・オンブズマン(Personligt Ombud; PO)を対象に面接調査をおこなった。現在スウェーデンの精神障害者支援におけるPOの位置づけとその意義について考察をおこなっている。3)主観的生活意識について,その意味するところを考察した。本人自身が感じているニーズ(主観的ニーズ)が表明されにくい傾向にある精神障害者への支援において,《生命-生活-生涯》に対する《気づき-態度-価値》の総体として「生活意識」を捉え,援助の過程を丁寧に分析することの重要性を示した。今後,さらなる検討をおこなっていく予定である。
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