研究概要 |
青森県内の内陸郡部6町村において、近隣対照を設定した準実験的デザインを用いて地域介入による自殺予防活動の効果評価を行った。今回、3町(総人口41,337名)の40歳以上住民を介入対象とし、残り3町(総人口47,975名)の40歳以上住民を対照とした。介入地域では、2005〜2007年度まで心の健康に関する社会調査(抽出率10〜25%;回収率70〜86%)と、小地域(人口比33%)の60歳以上住民にうつ状態スクリーニングを実施していた(参加率47〜66%)。2008年度には、40歳以上住民に基本健康診査とともにうっ状態スクリーニング(参加率20〜30%台)と、うつ・自殺予防に関する啓発・健康教育を実施しており、いずれも地域福祉関係者が参加を呼びかけた。対照地域では、一般的な心の健康づくり事業が実施された。 介入地域の60歳以上年齢調整男性自殺率(2005年〜2008年平均)は、それ以前の4年間に比べて56%減少し(90%CI=0,32-0.91)、60歳以上女性では60%の減少をみた(90%CI=0.21-0.74)。一方、対照地区の60歳以上自殺率は、男性で69%の増大、女性で78%の増大をみたが、ともに有意な変化ではなかった。 まだ、40歳から59歳の壮年期自殺率の変化をみると、介入地域の男性で一過性に減少傾向認めたが、介入地域の女性や対照地域の男女に有意な変化はみられなかった。 郡部の中高年者を対象として、社会調査とうつ状態スクリーニングを高い参加率で実施すると、高齢者の自殺率が低減することが示唆された。この介入プログラムは小地域ネットワークの活用により、短期間に広域で実施可能であった。2008年における青森県の自殺率が本邦で最悪の水準を示している中、今回介入した地域では明白な自殺率の低減を得ており、今後、さらに地域を拡大して実施する予定である。
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