研究概要 |
地域で施行される自記式質問紙法を用いたうつ病スクリーニングでは、その参加や成績に質問紙回収方法が影響する可能性がある。今回、清森県内市町村のうち郡部9地区において、壮年者自殺対策の一環として、うつ病の早期発見・介入の目的めもと、40~64歳の壮年期全住民13,000名(男性6,500名、女性6,500名)を対象に、留置法、郵送法または集合法に則り、自記式質問紙法を用いてうつ病スクリーニングを施行した。本研究では、この有症率スクリーニングの成績を性別に評価し、質問紙の回収方法が参加と成績に及ぼす影響を横断的に検討した。 介入方法は、地区ごとに質問紙回収方法を留置法、郵送法、集合法から選択し、対象者に対してうつ病エピソード・自殺観念に関するスクリーニングを実施した。陽性者に対しては、保健師または精神保健福祉士が電話・訪問により面接評価を行い、その結果に基づいて精神科医がうつ病エピソードの有無のみを判定した。 参加率は留置法で50%以上、郵送法で20~30%台、集合法で5%未満を得た。各地区のスクリーニング参加率と同陽性率の間には男女とも一定の傾向はみられなかったが、把握されたうつ病エピソード有症割合および陽性反応的中度(positive predictive value : PPV)は、男女とも参加率が高い程これらの値も高かった。 把握されたうつ病エピソード有症割合、PPVともに、男女とも質問紙回収方法間に有意差を認め、その推定値は留置法で最も高く、郵送法では男性が女性を下回り、集合法では男女とも低い値を示した。陽性率(16~18%台)には差がなかった。留置法により地域の有症率と同程度で同有症者が把握され、郵送法や集合法ではそれを下回ったが、後二者にはうつ病エピソードにより不参加が生じたためと推察された。
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