研究概要 |
うつ病スクリーニングを用いた地域介入が自殺率を低減させることが示されているが、抑うつ自体に対する影響を地域で検討した知見は少ない。今回、うつ病スクリーニングを用いた地域介入が壮年期住民の抑うつに及ぼす影響について、近隣対照を設定し、二度の横断調査により評価した。 対象はA県B地区(郡部)在住の40~69歳全住民約3,000名である。2005年から5年間の介入を施行し、集中介入区域(壮年者1,000名)では二段階式うつ病スクリーニングと啓発・健康教育を、通常介入区域(同2,000名)では啓発・健康教育のみを実施した。2004年と2009年の無記名自記式調査により、年齢、性別、婚姻状況および通院の有無を尋ね、Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)の前後変化をLog-binominal regressionを用いて両区域間で比較した。 介入期間中、集中介入区域では男女とも約半数がスクリーニングに参加した。二度の調査(有効回答率60%)では、集中介入区域の壮年男性の中等度抑うつ症状(CES-D≧24)有病率が45%低下し(年齢調整済み)、これは通常介入区域に比べて有意な変化を示していた。また、この効果は一般医通院の有無により修飾されていたが婚姻状況は関与していなかった。一方、女性の抑うつ症状(CES-D≧24および≧16)に対する効果は検出できなかった。これらの結果から、うつ病スクリーニングが郡部地域で実施可能なこと、壮年男性の抑うつ症状有病率を低減させること、および、その効果発現は一般医診療の影響を受けることが示された。
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